「光るパソコンを作りたいんですよ」
若い男性のお客様がそう言ってご来店された。
目を輝かせながら話す内容を聞いていると、ファンを大量に取り付けて、ケース全体をRGBで埋め尽くしたいという。最近の若い方の間では、過剰ともいえるほどのファン数で光らせることが一つのスタイルになっているらしい。
話を聞きながら、私は2000年代のことを思い出していた。
2000年代、光るファンはあまり売れなかった
2000年頃、光るファンは確かに存在していた。
当時、私はパソコンショップの店員だった。光るファンを店頭で見たとき、お客様と一緒に「おーすごい」と声を上げた記憶がある。光るというだけで新鮮で、未来的で、かっこよかった。
でも売れなかった。
今思えば理由は明確だ。当時のPCケースは、光るファンを活かせる構造になっていなかった。5インチベイ・3.5インチベイの数が重要視される時代で、ケースの素材はほぼスチール。サイドパネルに窓がない。光っていても外から見えない。光らせる意味がなかった。
それどころか、当時のユーザーが求めていたのは静音だった。うるさいファンをどう静かにするか。ファンコントローラーの方が圧倒的に売れていた。光より静音。それが2000年代のトレンドだった。
2024年、時代は完全に変わった
あれから20年以上が経った。
今のPCケースはサイドパネルが強化ガラス張りで、内部が丸見えだ。ファンは光ることを前提に設計されている。マザーボード・メモリ・グラフィックボード・CPUクーラー、全部光る。ケーブルまで光るものがある。
ソフトウェアで色・パターン・点滅のタイミングまで自由に設定できる。カラフルに虹色で光らせることも、落ち着いたホワイト単色にすることも、音楽に合わせて光を動かすことも全部できる。
実際に私が使用しているAMDのCPU用冷却ファンも光る。程よい輝きで、見ていて悪くない。おっさんになった私でも、なんとなく眺めてしまう。
「時代は変わったな」と思った。
光るパソコンの実用的なメリット
見た目の話だけではない。
パソコン内部が光ることで、動作確認がしやすくなる。ファンが正常に回転しているかどうかが目視で確認できる。不具合が発生したときに気づきやすい。修理屋の立場から言うと、これは実用的な話だ。
内部が見えることで冷却の状態も把握しやすくなる。ファンが止まっていれば一目でわかる。熱暴走の前に気づけるかもしれない。
ただし過剰なファンの取り付けは本当に必要かどうか考えてほしい。ファンが多ければ冷えるわけではなく、エアフローの設計が重要だ。見た目のためにファンを増やしすぎると、逆に気流が乱れて冷えなくなることもある。光らせることと冷やすことは別の話だ。
おっさん店員の感慨
あのとき「おーすごい」と言っていた店員が、今は光るパソコンの相談を受ける修理屋になっていた。
若いお客様のパソコンが完成して、ケースの中が虹色に輝いているのを見て、悪くないなと思った。2000年代に売れなかった光るファンが、こういう形で花開いたのだと思うと、少し感慨深かった。
自作PCの楽しみは性能だけじゃない。光らせる楽しみも立派な楽しみだ。パーツ選びの際にはぜひ光るパーツにも注目してみてほしい。


