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パソコンで勝っていた会社が、なぜ現場仕事に戻ったのか

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昔のNECは強かった、どころの話ではありません。パソコンといえばNEC、みたいな時代があったのを知っている方も多いと思います。うちの店でも今もNECを販売していますが、当時と今では、NECというブランドの意味がまるで違います。

ところが、その勝ち方がそのまま負け方になった。ここが面白いところです。

NECすごい、顔認証すごい、AIすごい、そんな話をしても宇宙まで飛んでいくので、私はもっと地面を見ます。修理屋として、毎日パソコンを触っている人間として見るなら、話の芯はもっと単純です。

パソコンで勝っていた会社が負けた。半導体でも苦しくなった。最後は、泥くさい現場仕事へ戻った。これです。

そしてこれは、NECだけの話ではなく、いまのパソコン業界全体を考える材料になります。

昔のパソコン業界は「箱を握った者勝ち」だった

昔は強い会社の条件がわかりやすかったです。本体を作れる、部品も握れる、規格も握れる、周辺機器メーカーも巻き込める。つまり箱のルールを作った会社が強かった。ハードもソフトも売り場も全部自分の庭、みたいなものです。

でもこの勝ち方には落とし穴がありました。自分の庭でずっと勝っていると、外のルールが変わったときに遅れる。パソコン業界では世界標準がどんどん進みました。独自規格より互換性、自前主義より分業、囲い込みより標準化。これに乗り遅れると、昔の王様でも普通に転びます。昨日までの王者が、今日は在庫の山に埋まる。笑えないですが、業界としてはずっとこれの繰り返しです。

パソコンで負けると、何が起きるのか

パソコンで負けるというのは、単に売れなくなるだけではありません。在庫、開発、人員、工場、販路、ブランド、全部に響きます。しかもパソコンは、派手に見えて利益が薄い。売れているように見えて、実はしんどい。

修理屋の立場から見ても、ここはよくわかります。お客さんは完成品としてパソコンを見ますが、売る側・直す側はそうではありません。部品の調達は安定するか、故障率はどうか、サポート費用はどれだけかかるか、古い機種の保守はいつまで引っ張るか。こういう地味なものが全部のしかかる。

うちの店でNECを販売しながら修理も引き受けていると、この構造が肌感でわかります。新しいモデルが出るたびに部品の互換性が変わり、修理対応の難易度が変わる。メーカーが大きければ大きいほど、現場への影響は広い。

半導体でも勝ち続けるのは別の地獄

パソコンで苦しくなったから半導体があるじゃないか、とは簡単にいきません。半導体は半導体で、また別の地獄です。設備投資は重い、競争は激しい、景気の波も大きい。作れば勝ちではなく、作り続けられる体力が必要です。

私は修理屋なので、半導体業界の最前線にいるわけではありません。それでも一つだけ言えます。パソコンで勝つ難しさと、半導体で勝つ難しさは、似ているようで全然違う。どちらも甘くない。だからパソコンで勝てなくなり、半導体でも厳しくなると、会社は嫌でも次の飯の種を探します。そこで出てくるのがSIer、官公庁、通信、社会インフラ寄りの仕事です。

最後に残るのは「問題を解ける会社」

パソコン業界は長く「何を売るか」の業界に見えていました。でも実際には、最後に強いのは「何を直せるか」「何をつなげるか」「何を止めないか」を持っている会社です。

パソコンを売る、ネットワークをつなぐ、サーバーを動かす、官公庁や会社のシステムを止めない、更新しても業務が回るようにする、障害が出たら誰かが責任を持って切り分ける。こういう仕事です。地味です。SNS映えもしません。でも金になるのは、だいたいこっちです。

うちの店でも同じことが言えます。NECのパソコンを販売して、壊れたら修理して、ネットワークが止まれば訪問して切り分ける。この流れは、大企業がやっていることと本質的に同じです。規模が違うだけで、やっていることの構造は変わりません。

いまのパソコン屋は、箱を売る仕事ではない

同業の人ほど認めたくないかもしれません。でももう、「このメーカーが強い」「このCPUがすごい」だけで飯が食える時代ではないです。知識は必要です。CPU、SSD、メモリ、規格、電源、熱、OS、全部わかっていたほうがいい。しかしそれは入口でしかありません。

本当に求められているのは、お客さんの状況を見て、修理・買い替え・様子見のどれが正解かを決める力です。直す価値があるのか、データは助かるのか、何円かかるのか、何日で戻るのか、買い替えたほうが結局安いのか。この答えを出すのが、いまのパソコン屋の本体です。

毎日店頭に立って作業しながら感じるのは、お客さんが求めているのは知識自慢ではなく結論だということです。「これは直りますか」「買い替えたほうがいいですか」この二択に、濁さず答えられるかどうかが全てです。

パソコン業界の未来は、派手な技術より「面倒くさい現場」にある

最近はAIだの自動化だの、話がすぐ大きくなります。でもパソコン業界で実際に金を払う人が困っているのは、もっと手前です。アップデートしたら起動しない、メールが送れない、Wi-Fiが遅い、古い会計ソフトが動かない、プリンターだけなぜか印刷できない。この世界です。

現場はきれいな図解の通りにはいきません。ケーブルはぐちゃぐちゃ、パスワードは不明、メールは昔の人が設定、プリンターはなぜか生きている、NASは誰も管理者を知らない。これが現実です。だから最後は、机上の理屈ではなく現場で切り分ける力が残ります。

うちの店が16年続いているのも、結局これだと思っています。派手な新製品レビューでも、スペック比較でもなく、目の前の困りごとを片づける。それだけです。

まとめ

NECの話を大企業すごい話として読むと少しズレます。修理屋として読むなら、もっと単純です。パソコンで勝っても、それだけでは永遠に勝てない。半導体で勝つのも別の難しさがある。最後に残るのは、システム・通信・保守・運用・切り分け。つまり、箱売りより問題解決のほうが強い。

昔は強い会社がパソコンを作りました。今は強い会社が現場を止めない仕組みを作ります。そして町の修理屋も、本質は同じです。パソコンを売って終わりではなく、困りごとを切り分けて、直すか買い替えるかを決める。この力がある限り、まだ仕事は残ります。

パソコン業界は昔より地味になりました。でも、そのぶん本質だけが残ったとも言えます。私はそのほうが、むしろ健全だと思っています。