「エクセルが開かない」その一言が、地獄の入口だった
熊本市南区の電気屋さんから連絡が来たのは、ある平日の朝のことだった。
「パソコンの調子がおかしい。ファイルが全部開かなくなった」
よくある話だ、と思いながら向かった。電源を入れる。起動はする。でも何かがおかしい。エクセルのファイルをダブルクリックしても開かない。画像ファイルも開かない。PDFも開かない。
「全部開かないんですよ」
おっしゃる通り、全部開かなかった。
ファイルの拡張子を確認した瞬間、背筋が凍った。
.xlsxが見知らぬ文字列に書き換えられている。画像も、PDFも、全部別の拡張子に化けていた。外付けHDDを確認する。同じだった。USBで繋いでいた機器も確認する。同じだった。
ランサムウェアだ。
「最近、メールのリンクか何かをクリックしませんでしたか?」
「…クリックしたかもしれない。よく覚えてないけど」
これが実態だ。感染の瞬間なんて誰も覚えていない。「なんか変なメールが来たな」くらいの感覚でクリックした、その0.1秒後にウイルスはパソコンの中を走り回って、片っ端からファイルを暗号化していく。
ニュースに出るのはいつも大企業だ。「某大手病院がランサムウェアに感染、診療を停止」「大手製造業のシステムが暗号化被害」そういう話ばかり流れてくるから、「うちみたいな小さい店には関係ない」と思っている人が多い。
大間違いだ。
ウイルスに規模は関係ない。熊本市南区の小さな電気屋さんのパソコンも、東京の大企業のサーバーも、感染するときは同じように感染する。むしろ大企業よりセキュリティが手薄な中小・個人事業主の方が狙いやすい的だとすら言える。
今回は、ある方法で復元することができた。ただしこれは運が良かった部分もあるし、深い知識がないと同じことはできない。「ネットで調べて自分でやろう」というレベルの話ではないことだけは断言しておく。
そこで本題だ。
フレッツ光を契約している方に朗報がある。NTTが提供する「セキュリティ対策ツール」が、ランサムウェアの一部に対応したアップデートを公開した。しかもフレッツ光ネクスト・プレミアム契約なら1台分が無償で使える。
ただし、このツールは自動でアップデートされない。
ここが罠だ。「入れてあるから安心」と思っていても、更新しなければ意味がない。古いバージョンのまま放置しているなら、入れていないのとほぼ同じだと思っていい。
フレッツ光ネクストの方は「フレッツ光ネクスト セキュリティ対策ツール ダウンロード」で検索してアップデートを確認してほしい。プレミアムの方も同様だ。
なお、コラボ光契約の場合は無償提供の対象外になるプロバイダもあるので、契約内容を確認してほしい。
最後に一つだけ言わせてほしい。
「他社のウイルス対策ソフトを毎年更新料を払って使っている」という方、一度立ち止まって考えてほしい。フレッツ光の無償ツールで代替できるなら、その更新料は毎年ただ捨てているお金だ。修理屋として、何度そのシーンを見てきたかわからない。
感染してから泣いても、ファイルは戻らない。戻ったとしても、そこに費やす時間とお金と精神的ダメージは相当なものだ。熊本市南区の電気屋さんが証明してくれた。
今すぐアップデートしてほしい。


