Microsoftがついにやりました。WindowsUpdateを最大35日間、カレンダー形式で一時停止できるようになります。Windows11 Insider Previewで確認された新機能です。
これを聞いてわたしが最初に思ったことを正直に書きます。
「止められるなら、最初からいらなくないですか?」
WindowsUpdateを35日止められる新機能とは
これまでWindowsUpdateの一時停止は週単位でしか設定できませんでした。新しい機能では、カレンダーを見ながら「この日からこの日まで止める」と1日単位で指定できるようになります。最大で35日先まで設定可能です。
旅行中、仕事の繁忙期、大事なプレゼンの前日。確かに便利です。わたし自身も「その日は止めたい」という場面は何度もありました。機能としては良い改善です。
でもここで立ち止まって考えてほしいのです。
Microsoftのジレンマに気づいていますか
Microsoftはずっとこう言い続けてきました。「WindowsUpdateはセキュリティのために必要です。すぐに実行してください」と。
でも今回「35日間止めていいですよ」と言い始めました。
おかしくないですか。
セキュリティのために今すぐ必要なものが、35日止めても問題ないとはどういうことでしょうか。緊急の手術が必要と言われて「1か月後でいいですよ」と言われたら、その手術は本当に緊急なのか疑いますよね。
これがMicrosoftのジレンマです。ユーザーの不満に応えて止められるようにすると、アップデートの緊急性という大義名分が崩れる。でも止められないと不満が爆発する。どちらに転んでも矛盾が生じます。
わたしは修理屋として10年以上この矛盾を見てきました。今回の新機能は、その矛盾がついに表に出てきたものだと思っています。
10年以上、毎日アップデートトラブルの相談が来ています
小学生から80代まで、Windowsを使っているすべての世代から、アップデートが原因のトラブル相談が10年以上ほぼ毎日来ています。症状のパターンは毎回同じです。
昨日まで普通に使えていたのに、今朝電源を入れたら起動しない。再起動を繰り返す。画面が真っ暗になる。プリンターが使えなくなる。Wi-Fiが切れる。BitLockerの画面が出て先に進めない。古いソフトが動かなくなる。
これらすべてに共通しているのが「直前にWindowsUpdateをした」という事実です。
Windows7の時代から始まり、Windows8、Windows10、Windows11と変わっても、相談の本質はまったく変わっていません。10年以上経っても同じ問題が起き続けています。これはユーザーの使い方の問題ではなく、アップデートそのものの問題です。
わたしたちは無償のベータテスターです
Microsoftはアップデートを世界中のユーザーに配信します。問題が出たら修正パッチを出します。つまり配信直後の数週間、わたしたちは無償でテストをさせられています。
ゲーム会社でいうベータテスターというやつです。ベータテストは本来お金をもらいながらやる仕事です。でもWindowsの場合は逆で、トラブルが起きたらお金を払って修理に来てもらいます。こちらが被害者なのに費用を負担する仕組みです。
これを10年以上繰り返しているのが現状です。
「今すぐアップデート」をうのみにしてはいけない
スーパーの店員さんが「今日はこれを買ってください」と言っても、自分が必要なものだけ買いますよね。銀行の行員さんが「この商品に入ってください」と勧めても、内容を確認してから判断しますよね。
なぜパソコンの画面に「今すぐ更新してください」と表示されると、すぐに実行してしまうのでしょうか。
画面の向こうにいるのはMicrosoftという企業です。あなたの知り合いでも、信頼できる専門家でもありません。企業には企業の都合があります。アップデートを実行させたい理由がMicrosoft側にあるだけです。
「セキュリティのために今すぐ必要です」という表示を見て、詐欺メールの「今すぐクリック」と何が違うか考えてみてください。構造はまったく同じです。緊急性を煽って、考える前に行動させる。これが詐欺の基本手口であり、Microsoftのアップデート促進の手口でもあります。わたしはそう思っています。
日本語版Windowsはトラブルが多い理由
もう一つ言わせてください。日本の経済力・技術力・国際的な発言力は昔に比べて下がっています。ソフトウェア開発の優先度も当然そこに比例します。英語圏で問題なく動いても、日本語環境特有の問題が出ることがあります。
日本語入力、日本語フォント、日本語特有のアプリとの相性。これらが絡んでトラブルが出やすい構造があります。Microsoftにとって日本市場は重要ですが、開発の中心は英語圏です。わたしたちが優先的にケアされているわけではありません。
これも10年以上の現場で感じてきたことです。
では35日の一時停止機能をどう使うべきか
今回の新機能は正しく使えば便利です。わたしが推奨する使い方を書きます。
アップデートが配信されたら、まず2〜3週間は止めておく。その間に問題が出た報告がないか確認する。問題がなければ時間に余裕がある日に実行する。実行前にデータのバックアップを取る。
これだけで、アップデートが原因のトラブルの大半は防げます。配信直後の1〜2週間が一番問題の出やすい時期です。そこを乗り越えれば、修正パッチが出ている可能性が高くなります。
35日の一時停止機能は、この運用をやりやすくするための道具として使ってください。
アップデートを完全に無視するのもダメです
一点だけ補足します。アップデートを永遠に止め続けるのはおすすめしません。セキュリティ上の問題は実際に存在します。インターネットにつないで使う以上、まったく更新しない状態は危険です。
わたしが言いたいのは、配信されたらすぐに実行しなくていいということです。タイミングを自分でコントロールする。それだけで十分です。今回の35日一時停止機能はそのための道具として活用してください。
修理屋としての結論
WindowsUpdateを35日止められるようになったことは、Microsoftが「アップデートは緊急ではない」と認めたに等しいです。10年以上わたしが言い続けてきたことと同じです。
すぐにアップデートする必要はありません。表示が出たからといってすぐに実行する必要はありません。スーパーの特売広告と同じです。必要なタイミングで、自分の判断で実行してください。
アップデート後に起動しない、再起動を繰り返す、プリンターが使えなくなった、Wi-Fiが切れたという場合はパソコン本舗にご相談ください。10年以上見てきたトラブルです。対応できます。


