USBメモリのデータ復旧依頼が来た。
通電はする。でもデバイスとして全く認識されない。パソコンに挿しても何も起きない。そういう症状だった。
基板を開けてコントローラーチップを確認した。
AU89103-AA1
この型番のコントローラーチップが実装されていた。

通電はするのに認識しない。この症状とこのチップの組み合わせから、コントローラーの不良を疑った。YouTubeで得られる情報を参照しながら判断すると、同型番のチップに交換できれば復旧できる可能性がある。
同型番のUSBメモリが見つからなかった
チップ交換を試みる前に、まず同型番・同ロットのUSBメモリを探した。
理想はお客様が購入したものと全く同じ製品だ。同じロットであれば基板の設計が同一で、チップの入れ替えがうまくいく可能性が高い。しかしお客様は同時期に同じUSBメモリを複数購入していなかった。私自身も同型番・同ロットが確認できそうな製品を探したが、見つからなかった。
チップ交換の前提が崩れた。
リフローを試みた
チップ交換が難しい状況で選んだのがリフローだ。
リフローとはハンダを熱で溶かし直すことで、ハンダクラック(ハンダの亀裂や接触不良)を修復する手法だ。コントローラーチップが物理的に破損しているのではなく、ハンダの接触不良が原因であれば、リフローだけで復旧することがある。一時的にでも認識できる時間が作れれば、その間にデータをコピーするだけでいい。
ダメ元でリフローを試した。
結果は変わらなかった。症状はリフロー前後で全く変化なし。認識されないままだった。
限界を正直に伝えた
データは救えなかった。
他に原因がある可能性も否定できない。フラッシュメモリチップ自体の問題、基板の別の部位の不良、私が把握していない要因。まだまだ勉強が必要だと感じた。今回は私の技術ではここまでが限界だった。
お客様にはそのことを包み隠さずお伝えした。
何ができて、何ができなかったか。どこまで試して、なぜ無理だったか。全部話した。料金は当然無料だった。
お客様はデータが取れなかったにもかかわらず、満足していただいたように感じた。
修理屋として16年やってきて思うことがある。「できなかった」ことを正直に話すことは、「できた」ことと同じくらい大事だ。誤魔化したり、曖昧にしたり、料金だけ取って終わりにするような仕事はしたくない。
USBメモリのデータ復旧は、症状によっては当店の技術では対応できないケースがある。それでも「試してほしい」という方はご相談ください。できることとできないことを最初に正直にお伝えした上で対応します。


