「Skypeの設定をしてほしいんですが」
この依頼、毎日のように来ていた時代があった。
海外に住んでいる子供と無料で話したい。そういうお客様が次々と来店された。当時は携帯電話の普及もいまいちで、海外との通話は高額だった。国際電話を使えば数分で何百円も飛んでいく時代だ。そんな中でSkypeが登場した。インターネット回線さえあれば、海外の家族と無料でビデオ通話ができる。これは当時、本当に革命だった。
修理屋として、Skypeの設定を何十回・何百回と手伝ってきた。「子供がオーストラリアにいるんです」「娘がアメリカに嫁いで」「孫がカナダに留学していて」。そういうお客様が次々とパソコンを持ち込んできた。設定が完了して画面に家族の顔が映った瞬間、お客様の表情がぱっと明るくなる。その場面を何度も見てきた。Skypeには、そういう記憶がたくさん詰まっている。
時代はZOOM、そしてLINEへ
それがいつの間にか変わった。
スマートフォンが普及し、LINEが登場した。アプリを入れるだけで無料通話ができる。ビデオ通話も簡単だ。Skypeのようにパソコンの設定を頼まなくても、スマホさえあれば自分でできる。Skypeの設定依頼は来なくなった。
コロナ禍でZOOMが爆発的に普及した。仕事もプライベートもZOOM。「ビデオ通話といえばSkype」という時代は完全に終わった。
2003年に誕生したSkypeは、2011年にマイクロソフトに買収された。この時点で、ある程度の未来は見えていたかもしれない。マイクロソフトにはTeamsという法人向けのビデオ会議ツールがある。個人向けのSkypeを残す理由が薄れていく。そして2025年、ついにSkypeのサービス終了が発表された。
ふと、インストール済みのSkypeを起動してみた
ある日、パソコンに入ったままのSkypeをふと起動してみた。
画面にメッセージが表示された。
「Skypeはもうすぐ終了します。Teamsを使ってください」

思わず声が出そうになった。
Teams(Microsoft)ごときが偉そうに、と。
失礼ながら、これが正直な気持ちだ。Skypeがどれだけ多くの家族を繋いできたか。どれだけ多くのお客様が目を輝かせてパソコンを持ち込んできたか。その積み重ねの上に今がある。それを「はい終わり、次はTeamsへどうぞ」の一言で片付けるのか、と。
わかっている。ビジネスはそういうものだ。感情ではなく、数字と戦略で動く。マイクロソフトが全力で推しているのはTeamsだ。法人需要・企業向けライセンス・Microsoft 365との統合。Skypeが残る理由よりTeamsに一本化する理由の方が多い。
それでも古い人間の私には、一言言いたくなる瞬間があった。
ツールは変わる。気持ちは変わらない
修理屋として思うのは、ツールはどんどん変わるが、「家族と顔を見て話したい」という人の気持ちは変わらないということだ。Skypeが消えてもLINEがある。LINEが消えても次のツールが出てくる。お客様の「設定してほしい」という依頼は、形を変えてこれからも続くだろう。
さようなら、Skype。たくさんの家族の顔を繋いでくれてありがとう。
※動画はSkypeの着信音です。懐かしい方も多いのではないでしょうか。

